ソン・スンホン主演『情愛中毒』を観て・・・。
この時期、疲れるのは当たり前なのですが、精神的な疲れであるなら、なんとかしようとする。
それで、先日、午前中がお休みだという日の前日に、韓流ドラマを久しぶりに観た。
ちょうど友人に勧められて、冬ソナにハマった世代になる。
あのシリーズの中では、私は、特に、『夏の香り』が、なんともさわやかで好きだった。
イ・ビョンホンが大好きだったのだけれども、それよりも、ソン・スンホンが。というより、『夏の香り』の中で、ソン・スンホンが演じている主人公が好きだった。
そのせいか、久しぶりにアマゾン・プライムにあった、ソン・スンホン主演の『情愛中毒』を見つけ、大人になったソン・スンホンが、どんな演技をしているのか見てみたくなった。
ときは、1969年。まだベトナム戦争さなかの韓国。
軍人の帰還兵であり、そして、エリートコースをまっしぐらに走っているソン・スンホン演じるキム大佐。上官の娘と結婚し、将来を約束され、人気もあった。けれど、彼はベトナム戦争後の精神的後遺症に悩んでいた。
そんな時、部下として赴任してきた、チョン大尉の夫人であるガフンに心惹かれ、ガフンもキム・ジンピョンの思いにまるでこたえるかのように惹かれていく。
全裸の場面、という表現があり、2014年の公開時の会見でも、そのことが話題になったらしい。確かに、韓国の映画では珍しいように思う。
ただのプラトニックな愛情としてでなく、肉体的な場面もあるにもかかわらず、全編を通して、純愛を感じる。
ソン・スンホンが、監督の言葉に心がすっと軽くなったように、私も、この作品を見て、いわゆるドロドロとしたイメージを抱かなかった。
この主人公の2人が、いわゆる、エリート階級(キムの昇進には、大統領の言葉まで登場する。)に属していながら、本当は競争の中で生きているというより、自分の心の中の虚しさと折り合いをつけて生きてきたからだろう。この二人が惹かれ合うことに、どうしようもなく必然性を感じてしまうのである。
いろんな人に憧れられながら、キム大佐は、きっと不器用な人なんじゃないかな?と思ったのは(いやいや、そもそも不器用でなければ、こんな恋愛の仕方をしないだろうし・・・。(笑))、初心なガフンが、ばかげた話として、自分をキム大佐が見舞ってくれた時のことをよく思い出し、『嬉しかったみたい・・・。』というのに対し、『私はいつもだ。いつもあなたのことを思ってる。』という場面。そして、彼女のバッグに、自分のライターを、さっと入れて、自分の座っていた場所に戻る場面。
この二人、まるで日本人だったら、地方の小学生のような、素朴さである。
決して幸福とは言えない過去をもつガフンの、どこかすべてを受け入れているような、はかなさと強さと、周りを思いやる気持ちと、どうしたって、計算高くはない彼女の純粋さに惹かれていくキム大佐の気持ちがわかる。彼もまたベトナム戦争での実績を褒めたたえられ、英雄と奉られながらも、その実ものすごく傷ついている、愛情深い人物でもある。
なんとかならなかったのだろうか・・・?
でも、不思議なのは、意外にも上官の娘であるキム夫人は、そうそう悪い人物でも、上昇志向だけの人間にも見えないのである。女優さんの控えめな演技のせいかもしれない。
愛にのめっていくキム大佐の最期は悲劇ということになるのではあろうけれど、微笑んで死んでいったという彼の最期には、愛する人と出会えたしあわせがあったのだろうと思う。
現実的に語ってはいけないけれど、もし現実的に語ってしまったなら、相当人騒がせな、バカな男・・・、ということもできるだろう。何もかも捨てて、それも、周りは助け舟まで出しているのに、そっちを選ぶ・・・?と思うのが一般的だろうけれど、でも、一生ガフンの心には、『あなたは私の宇宙よ。』と言ったその想いが残っているのだろうし、キム大佐には、ある意味彼女と会うまでの空虚な人生を思えば、きっと、心の中に大切な人を想い続けて、しあわせだったのだろうと思う。
そもそも純愛なんて、結構痛みを伴うものだろうと思うし。
それから、これは余分な話・・・。
キム大佐の夫人はどうなったのだろうか?お腹に彼の子どもを抱えて・・・。
と思いながら、この女性もまた、もしかしたら、心底キム大佐を愛し、すべてを受け入れていたりしないかな・・・・?と思ってみたりする。
なぜなら、ガフンの過去を知っても、ガフンを庇ったり、彼女を好きだと言っていたし、本当にもしかしたらの話ではあるけれど、彼女は、キム大佐のすべてを受け入れる度量ももっていたのかもしれない・・・。とも思うのである。
それとも、また、父の力で、子どもと共に、誰か有望な軍人と再婚したのだろうか・・・?
よくある話で、夫に裏切られた傷ついた女性として、生きていくのだろうか?
義父である上官が、キム大佐のしでかしたことを処理するために、キム大佐と話している場面で、最初は理性的だった義父が、怒りだしたときの言葉が印象的だった。
娘に恥をかかせやがって!
だったけど、私なら、
娘を傷つけて・・・、と言うだろう。
同じことかもしれないけれど、ちょっと違う気がする。
人間としての娘の気持ちと、体面と・・・。
もちろんどちらも大切だけれど、どちらの比重が大切な人間か・・・?そういうことが、愛するということには大きくかかわるのかもしれない、と思った。
かつて、韓流ドラマが日本でも受け入れられ、とんでもなくブームを呼んだころ、イ・ビョンホンが表現していたように、どこか韓流ドラマには、まだ薫りが残っているような気がする。あまりにも気忙し過ぎない、少しばかりゆったりと時間が流れているような、そんなストーリーの展開の緩やかさの中に、まだどこかに、薫りがあるのを私も感じる。
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