『阪急電車』を観て、そして読んで・・・。
以前から芦田愛菜ちゃんが出演していることや馴染みの阪急沿線が舞台であることや、結構いろんなドラマが描かれているということを知っていて、いつか観てみたいと思っていた映画を、なぜこういう時期になってなのかわからないけれど、アマゾンプライムで観た。
体調を崩し、大抵そういう時には気分転換を図ろうとするのだけれど、お休みをいただいた2日目の夜に観た。
思っていたのとは全然違う作品だった。
阪急今津線。
京都線にばかりお世話になってきた私には決してなじみ深い沿線ではないのだけれど、2年ほど前に母と旅行に行った辺りだし、大学時代の先輩にはその辺りから通っておられた方がいらして、なんだか親しみがあった。
駅名としてだけは知っているところが多かったし、父と一緒に2人で門戸厄神にお参りして、帰りに十三駅のおうどんを立ち食いしたのがとんでもない思い出で、亡くなる直前に父はそのことを母に話していたらしい。
最初に出て来る祖母と孫娘の会話を聞いていて、なんとなくこのおばあちゃんの孫に対する接し方に共感を持っていた。
まだ幼稚園児の孫だというのに、大人みたいなことを言っている。
なぜ犬を飼えないのか?という問いに、
第一、あなたのお母さんは犬が嫌い。
それにあなたは飽きっぽい。泣いて騒いで手に入れたものですぐに飽きてしまったものを言ってあげましょか?
みたいな論理的なことを言っている。べたべた甘えさせたりしないで人生を語っているようなおばあちゃん。
なかなか強い人だなあ、と思っていたし、このおばあちゃんの若い女性に対してのアドバイスなんかも共感できてしまう。
理不尽な目に遭ったときの怒り方なども、
あなたたち、どうも私を怒らせてしまったようね・・・。
というセリフ。私にもありそうだと思っていたら、原作ではこのおばあちゃんは元高校教諭だったそうな。
どおりで、言いたいことがよくわかる。
もうやめなさい。泣くのは。
泣いてもいい、でも、自分の力で泣くのをやめることのできる女になりなさい。
だなあんて、幼稚園児の孫娘に言っている。
小さい子の成長に、こういうおばあちゃんの存在って大きいだろうな、と思う。
この片道15分、7.7キロの道程にはドラマがたくさんあって、それも年配の女性から若い女性へのアドバイスに満ちていて、年を重ねることはいいことだと思わされる。
それから、高校生役の有村架純の、社会人の彼氏役の玉山鉄二がまたいい味を出している。
関西弁で、おっとりとしゃべっていて、彼女を大事にする優しい彼氏である。
いい恋愛をしていて、優秀だとか抜け目がないとかではなくて、自分のことを大事にしてくれる彼氏、という点で、別れを決めた暴力を振るう男性を彼氏に持った女子大生の恋愛とは好対照であり、女性へのメッセージとも受け取れる。
それにしても、映画の冒頭で、なんとも情けない役で鈴木亮平さんが登場しているのも、興があって面白い。
今津に生まれ育った俳優さんである。鈴木亮平の彼女役に中谷美紀はちょっと合わないな・・・、別れて結構、よーかった!と思った私って根性悪いのだろうか?
数年前、ちょっと気持ちが行き詰ったときに、京都のあるグループに参加した。
その頃から、せいぜい里帰りの折にどこかに行くのに乗るくらいだったのに、いきなり阪急京都線を思い出し、リアルに阪急電車を感じるようになった。
ちょうどあちこちに出張に行き始めた頃だったので、富山にばかりいないであちこちを一人歩きするようになった。
いい作品だったな。
たくさんの思い出や阪急電車の雰囲気を思い出させてくれて、人生の教訓にも満ちていて。
原作も読んでみたら、また違う味わいで、映画化の素晴らしさも原作の素晴らしさも実感することができた。
素敵な作家に出会えた。
確かに馴染みのない今津線ではあるけれど、ふらっと乗ってみたいなあ・・・、と思わされた。
どこにでも小さなドラマがある。
都会であればあるほど、行き交う人との縁が薄く感じられるけれど、それでも、その中のドラマをこんなに素敵に描くことのできる作家がいらっしゃるのだなあ、と思った。
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